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放置すれば認知症リスクが確実に増える 老化による「聞こえにくさ」をどうすればよいか

 高齢になると耳が遠くなる。多くの人が当然のように受け入れている老化の一つだが、実は加齢性難聴と呼ばれる病気の一つだ。近年、高齢者の難聴が認知症のリスク因子であることが明らかになった。一方で、補聴器などを使って適切に聴覚を矯正すれば認知症予防につながると示唆する研究結果も報告されている。しかし国内の補聴器の使用率は低い。こうした状況を受け、日本耳鼻咽喉(いんこう)科頭頸部(けいぶ)外科学会が「80歳で30dB(デシベル)の聴力を保とう」という「8030運動」を始めた。聞こえを巡る現状と課題について取材した。 加齢により音を伝える有毛細胞が減少  そもそもなぜ高齢になると耳が遠くなるのだろうか。それを知るには、まず聞こえる仕組みを理解する必要がある。  顔の両側にある耳(外耳)を介して集められた音(空気の振動)は鼓膜を通じて中耳にある耳小骨(じしょうこつ)に伝えられ、耳小骨で増幅された後、さらに内側の内耳にある蝸牛(かぎゅう)の中のリンパ液を振動させる。リンパ液の振動で有毛細胞が刺激されると、振動が電気信号に変えられ神経を通って脳に伝わる。  難聴には、外耳や鼓膜などの中耳に障害があって起こる伝音難聴と、内耳などの音を感じる部位が障害されて起こる感音難聴、さらに両者が合併した混合難聴があるが、加齢性難聴はこのうちの感音難聴にあたる。蝸牛の中の有毛細胞が加齢のために減ってしまい、音を正常に脳に送ることができなくなった状態だ。残念ながら、現状では加齢性難聴を治療する方法はない。 難聴があると認知症リスクは37%増  今年7月、英医学誌ランセットに、中年期以降の難聴が認知症の発症リスクの最大要因の一つとする報告が掲載された。「認知症の予防、介入、ケア:ランセット常設委員会の2024年報告書」と題する、認知症のリスクに関する先行研究を総合的に検証した論文で、20年に発表した報告書をアップデートした内容だ。
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船頭が舵を空振りし落水、操舵不能で転覆し2人死亡…保津川下り転覆事故で運輸安全委が調査報告書

 京都府亀岡市の保津川(桂川)で昨年3月、29人が乗った川下り船が転覆して船頭2人が死亡した事故で、運輸安全委員会は26日、船頭が水面上で 舵かじ を空振りして川に転落し、 操舵そうだ 不能になったことが原因とする調査報告書を公表した。  事故は昨年3月28日午前11時頃に発生。船頭4人と乗客25人が乗った遊覧船が岩場に乗り上げて転覆し、当時40歳と51歳の船頭2人が溺死し、乗客19人が負傷した。  報告書は、船尾にいた船頭(38)が舵を空振りして落水し、舵の持ち手部分が水につかって船が制御不能になったと指摘。事故の前に舵を船体に固定する部材を変えたことも空振りに影響した可能性があるとした。船頭の足場には落水防止用の設備がなかったほか、死亡した船頭の1人は救命胴衣を着用していなかった。
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酷暑の避難所 体も気分も重く

 防災や災害医療の専門家でつくる「避難所・避難生活学会」が7月下旬、酷暑の避難所での寝泊まりを想定した訓練を、大阪府八尾市の小学校で実施した。真夏に災害が起きた場合、エアコンのない避難所ではどんな問題が生じるのか。訓練に参加し、自治体職員や研究者らと熱帯夜を乗り切る工夫や必要な対策について考えた。(松田俊輔)  「ドンドンドン」。午前3時、小学校の体育館で、トイレに起きた人の足音と床の振動で目が覚めた。厚さ8ミリのアルミマットを敷いていたが、かかととお尻が痛み、寝返りを打つと、床に置かれたランタンの光が目に入ってきた。結局、朝まで浅い眠りと目覚めを繰り返してしまい、十分に眠ることができなかった。  25度以上の熱帯夜。近くで雑魚寝していた大阪府災害対策課の大井祥之さんも「一睡もできなかった」と疲れた表情を見せた。  夏場を中心に豪雨災害が多いことから、暑い避難所での過ごし方を考えようと、避難所・避難生活学会が7月27~28日、初めて訓練を企画した。  27日正午に集まり、エアコンの利いた涼しい教室で熱中症の症状や対処法を学んだ後、寝泊まりをする体育館に移動した。教室を出ると、蒸し風呂のような熱気が体を包み、体育館に着く頃には体も気分も重くなっていた。夕食は午後6時から。災害備蓄用のアルファ米に水を注いで食べたが、暑さで体力を奪われたせいか、空腹を満たしても力はわいてこなかった。  猛暑日となった八尾市の最高気温は35・4度。日が暮れても汗が止まらない。厳しい環境だったが、食後のシャワーは、低温に調節して体を冷やすことができたので、気分転換になった。  熱中症予防 暑さ指数確認   ◇風通し重要  夏の避難所で注意しなければいけないのは熱中症だ。2018年の西日本豪雨では、体育館に避難した人が熱中症と診断され、救急搬送されたケースもあった。  避難所でも熱中症予防の指標となる「暑さ指数(WBGT)」の確認が重要となる。湿度と日射、気温の三つのデータから算出される指数で、28を超えると熱中症患者が増えるとされる。日本生気象学会のガイドラインでは、28以上31未満を「厳重警戒」、31以上を「危険」として、注意を呼びかけている。  訓練中に体育館内を中心に10か所で観測した一般社団法人計測健康啓発協会の望月計代表理事によると、日中で厳重警戒レベルの29~30前後、午前0時でも27を超えていた。  体育館では風通しをよくするため、一晩中5か所の扉を開放し、大型扇風機約5台で風を送り続けた。望月さんは「こうした対策がなければ熱中症の症状を訴える人が出ていたかもしれない」と指摘。今回は扇風機が使えない停電時を想定した訓練も検討されたが、初の企画で危険性も考慮すべきだとして見送られた。   ◇しのぐ対策  西日本豪雨で被災した岡山・広島県内では、発生から数日以上たってから避難所のエアコンを設置する工事を始めた地域もあった。設置されるまで暑さをしのぐ対策が必要となる。  今回の訓練では使わなかったが、エアコンを付けた自家用車や、携帯用の小型扇風機が有効だと感じた。参加者からは、▽段ボールベッドの上にござを敷いて寝ると、通気性が増し涼しく感じた▽扇風機を計画的に配置して風の通り道を作れば快適に過ごせる――などの意見が出た。  より暑さが厳しい状況や、扇風機が使えない停電時など訓練以上の事態も考えておく必要がある。  避難所・避難生活学会の水谷嘉浩常任理事は「避難所の暑さ対策は避けては通れない問題だ。学会として有効な対処法を示せるよう訓練を重ねたい」と話した。
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